令和7年4月21日から始まった不動産の所有権に関する登記申請時の新制度、具体的には「所有者の検索用情報(氏名・住所に加え、生年月日等)とメールアドレス等の申出」の義務化から約2ヶ月が経過し、この制度下による登記も多数申請されています。
この制度は、不動産登記制度の更なる適正化と利便性向上を目指すものであり、いくつかの側面から現状を捉えることができます。
1.制度導入の目的と効果
・所有者特定の迅速化
これまで、登記簿上の情報だけでは所有者を特定するのに時間を要するケースがありました。検索用情報の提供により、法務局が迅速かつ正確に所有者を特定できるようになり、登記手続きの効率化、相続登記未了問題の解消、所有者不明土地問題への対策に繋がることが期待されています。
・オンライン申請の推進
メールアドレスの提供は、登記のオンライン申請を促進し、申請者の利便性向上に貢献します。また、登録により住所変更手続の利便性が向上する見込みです。
・登記の正確性向上
所有者の正確な情報を把握することで、登記情報の信頼性が高まり、不動産取引の安全性が向上します。
2.制度開始後の状況と課題
・申請現場の混乱と慣れ
制度開始直後は、申請書への記載事項の増加や、情報提供に対する理解不足から、申請現場で混乱が見られました。しかし、法務局による周知活動や、司法書士などの専門家によるサポートにより、徐々に制度への理解が進み、申請もスムーズになってきていると考えられます。
・個人情報保護への配慮
生年月日などの個人情報を提供することに対する懸念も存在します。法務局は、これらの情報が厳重に管理され、登記事務以外の目的で使用されることはないと説明しています。また、デメリットはありますが、メールアドレスの申し出を行わないことも可能です。制度の透明性を高め、国民の理解と信頼を得ることが重要です。
・制度の周知徹底
まだまだ制度を知らない国民も多く、特に高齢者や不動産取引に不慣れな人への周知が課題です。法務局だけでなく司法書士のような専門家も、ウェブサイトや広報誌、相談窓口などを活用し、制度の意義や申請方法について、より分かりやすく情報発信する必要があります。